気付けば、君の腕の中。
―それは、テーマパークから出た後、一ノ瀬を送るために駅まで歩いていたときの会話だ。
真剣な表情で俺を見つめる一ノ瀬は、今まで見た女の子たちと同じように「泣きそう」な表情を堪えていた。
『…なんか、坂木くん。私のことが“好き”っていう感じじゃないように見えて…』
この会話は、何度も聞いたことがある。
『それに、…何かに怖がっているような、そんな感じがしたの…。あ、ごめん、間違いだったら…』
この言葉も耳にたこができるほど、聞いたことがあった。
だから俺は決まって、こう返すのだ。
『俺、恋愛とかよく分からないから、そう見えるだけで、別に嫌ってるとかじゃないよ』