気付けば、君の腕の中。


何かあったのだろうかと不安になっていると、ようやく聞こえた彼女の声。

ホッと胸を撫で下ろすと、違和感に気づいた。


…あれ、もしかして―泣いてる?



「……絢華、今どこにいる?」


そう訊ねると、絢華は「家」だと答えた。

俺は辺りを見渡して、そこまで遠くに来ていないことに安堵のため息を零すと、来た道を急いで引き返した。



…どうして、絢華が泣いていると、俺まで苦しいのだろうか。

怪我でもしたのかな、とか。

俺と同じように家の問題を抱えている…ように見えたから、両親と揉めたのだろうかと思えば思うほど、不安が募っていく。



絢華の家前に着くと、俺は息を整えて、今素直に思ったことを口にした。



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