気付けば、君の腕の中。
ゆっくりと息を吐いてから、俺は絢華の涙を指先で拭った。
自分に言い聞かせるように。
この感情がそうであってほしい、と心から願いながら。
「俺でよければ話してよ」
目の前で絢華の頬が、薄っすらと赤く染まる。
違う、可愛い、なんて思っていない。
何かを言おうとした絢華より先に、俺はゆっくりとその言葉を噛み締めて言った。
「“友達”なんだから」
ハッとしたように絢華は俺を見つめて、そのまま目を伏せてしまった。
けれど、もう一度顔を上げたときに見た彼女は―…、とても器用に笑っていた。