気付けば、君の腕の中。
+ 君のために手を離した
(Side:絢華)
靴を履いた後、凜くんに手を引かれながら連れられた場所は、幼い頃にお母さんとお姉ちゃんと三人で遊んだ公園だった。
ベンチに腰を下ろすと、凜くんがゆっくりと息を吐いた。
「…絢華、言いにくいことは言わなくていいけど、一人で抱え込むなら話してほしいな」
…ずるいなあ、凜くんは。
今だって優しく手を握っているけど、それをどんな気持ちであたしが受け止めているのか知らないのだろう。
「あたしの家族は…、昔は凄く仲がよかったんだ。近所でも有名なくらい、色んなところに出かけたり、遊んだり…」
この公園で、お母さんが作ったお弁当を食べたこと、お姉ちゃんが泥団子を作って自慢げにしていたことも覚えていた。