気付けば、君の腕の中。
それから何事もなかったように授業を受けて、奈々美が時々「本当にいいの?」なんて言ったけど、それも無視した。
だって、縁がないのだから仕方が無い話だ。
さりげなくお菓子をくれた奈々美に感謝しながら、あたしは帰路についた。
ある日の晩。
気温がぐんと下がり、いつ雨が降り出してもおかしくない空が、窓の外に見える。
一人コタツに入りながらテレビを観ていたら、階段を下りる音が聞こえた。
化粧でぼろぼろの肌、今にも閉じてしまいそうな瞳を見て、あたしは自然と立ち上がっていた。
「お、お母さん……! 起きてて大丈夫、なの…?
あ…えと、お茶でも淹れようか?」