気付けば、君の腕の中。



凜くんに…、その、キス(凜くんの唇があたしの唇に触れていたから、多分キスだと思う)をされてから、早一週間が過ぎた。

誰かがあたしを呼ぶ声が聞こえたような気がして、顔を上げた。


「っえ、奈々美?」

「もう! さっきからぼんやりとしすぎ!」


目の前で心配そうにあたしの顔を覗き込んだ奈々美は、ため息をついた。


…そういえば今、学校にいたんだ。


「…白状しなさいよ。何があったの?」

「ううん…、何でもない……」


あの日から、凜くんに避けられている。

理由は分からないけど、あたしと視線を合わせようとしないのは、キスをするつもりじゃなかったという意味なんだろう。


…だからあたしも、なかったことにしているつもりだ。


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