気付けば、君の腕の中。
何度もあの日の記憶が甦る。
凜くんの整った顔が近づいてきて、ゆっくりと目を閉じた彼は、とてもかっこよかった。
…ああ、もう。
思い出してしまうと、顔が赤くなってしまい、奈々美が「え、大丈夫!?」と心配するほどあたしは動揺していた。
「うう…、奈々美…。言いたいけど言えないんだよ…っ!」
「うんうん、分かった。とりあえず落ち着きなって」
肩を優しく叩かれて、あたしは深呼吸を繰り返した。
…凜くんは桃と付き合っている。
あのキスは「事故」なのかも知れない。
向こうが避けている以上、あたしは話しかけることが出来ないし、今は考えても無駄だということだ。