気付けば、君の腕の中。
お母さんをコタツに入るように誘導すると、あたしは急いで出掛ける準備をする。
今の時期は寒いからこげ茶色のコートと、赤いマフラーを巻けば完璧だ。
「…お母さん、行ってきますっ」
返事はなかったけど、お母さんがふらふらの状態で出掛けるより、あたしが外へ行ったほうが何倍もマシだろう。
薬局まで徒歩で30分ほどだから、行きと帰りを含めて一時間少しで帰れるかなあ…。
街灯だけが頼りの道を歩く。
視界にちらちらと自分の癖がついた黒髪が映った。
「有難うございましたー」
やる気のない店員の声を聞きながら、お店を後にすると、先ほどよりもぐんと気温が下がっていた。
ぶるりと身震いをしながら帰路に着けば、あたしの家から少し離れたところに人影が見えた。