気付けば、君の腕の中。
+ 春の日が降り注いだ
家に帰るのが辛くて、あたしは逃げるように二人とは反対方面に向かう電車に乗った。
行く場所なんて決まっていない。
ただ、どこかへ逃げたかった。
行き場のない感情を捨てて、楽になれたら、どれほど幸せなんだろう。
薄っすらと目に溜まった涙を拭うと、無性に凜くんに会いたくなってしまった。
それは、許されないことなのに。
彼女になれないあたしが、望んではいけないことなのにね―。
…どうして、みんなあたしから離れてしまうのだろう。
後どれくらい頑張れば、家族を取り戻せるのか、また凜くんや桃と話せるのか―、もう分からないよ…。