気付けば、君の腕の中。
奈々美と別れて教室に入ると、凜くんはまだ来ていなかった。
それに少し息を吐くと、さっさと席に座る。
…どうしたら話しかけられるのかな。
突然話しかけても、凜くんのことだから、逃げてしまうかも知れない。
携帯の画面をタップすると、お姉ちゃんとツーショットの写真が映った。
まさか月城を連れて、県外に行くなんて予想外だった。
「…おい、何辛気くせー顔してんだよ」
その声に顔を上げると、五十嵐くんが怪訝そうにあたしを見下ろしていた。