気付けば、君の腕の中。
放課後になると、思った以上にHRが長引いてしまい、あたしはすぐに教室を飛び出した。
待ち合わせは5時だから、駅を幾つか乗り換えをして、ギリギリ間に合うだろうか。
下駄箱のところで桃を見かけたけれど、あたしは視線を逸らして走り続けた。
駅を乗り換えて、何とか地図を頼りに来て見たけど…、凄い田舎町にある幼稚園だった。
先ほどから、車とすれ違ってないし、人すら見えない。
…ほ、本当にこの幼稚園で合ってるのかな。
“竜浜幼稚園”と紙には書いてあり、門の近くの壁に同じ文字が刻まれているから合っている…はずだ。
古びた幼稚園の門を開くと、ギギギ…と鉄が擦れて不気味な音が聞こえた。
辺りをきょろきょろと見渡しながら、玄関に近寄る。
あと少しで扉に触れる―、と思ったそのときだった。
「あら、誰かのお迎えかしら?」
「!?」
「ごめんなさい。驚かせてしまったわね」
突然話しかけられたため、思い切り肩が震え上がった。