気付けば、君の腕の中。


あたしは上手く言葉が見つからないまま、口を開いていた。


「…あの、きっかけさえあれば、また話せると思うんです」

「きっかけ?」

「はい…、あたしもずっと探しているんです。もう一度…、向き合って話すために」

「!」


目を見開かせる女性に、あたしはお父さんとお母さん、そしてお姉ちゃんを思い出した。


「必ずきっかけは作れると思います。だから、よければ…一緒に探しませんか?」

「……貴方、とっても優しいのね」

「えっ…?」


女性はあたしの両手を握り締めた。

簡単に振りほどけるほど、弱い力で、あたしの手を包む女性は―、きっと涙を堪えているのだろう。



「有難う…、是非お願いしてもいいかしら」


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