気付けば、君の腕の中。
これでもかと言うくらいに目を見開かせる男の子。
でも、すぐに俯いてしまった。
「…そっか、俺ずっと家庭事情のせいで苛められてたから…」
暗い顔を見て、何て声をかければいいのか分からなかった。
その感情は、まるであたしのお父さんとお母さんを引き止められなかったあの時と同じで、歯痒い気持ちだった。
「一回話すと結構暗くなっちゃうのが俺で…、だからかな。
皆口を揃えて“根暗” だとか…まあ、その通りなんだろうけどね」
「…そう、なのかなあ。
あたし上手く言えないけど…、そんな人がいてもいいんじゃないかなって思う」
「…え」
「だって、世界中の人を見たって同じ人なんていないでしょ?」
あ、また男の子の瞳が丸くなった。
白い息を吐きながら「でも何様って感じだよね」と苦笑しながら謝ろう―、そう思ったときだった。