気付けば、君の腕の中。
…だから、白くんもそれに気づいて、あたしをほっとかなかったのかな。
「白くんに感謝しないと…駄目ですね」
「ふふ、でも一ノ瀬くんも変わったわよ。貴方のおかげで」
「それなら嬉しいですけど…」
「そうそう。一ノ瀬くんなら、甘ったるいお菓子が大好きよ。ケーキとか大好物じゃないかしら」
「…ケーキ」
そうだ。
桃の家に行ったあの日、白くんは本当は食べたかったのかも知れない。
でも…、ケーキを食べるのは子供っぽいって勘違いしているから、遠慮したのかな。
「じゃあ、今度…作ってみます」
「あの子、とっても喜ぶわ」
両手を叩いて嬉しそうに言う清水さんを見て、あたしの心に温かいものが降り注ぐ。
それは目には見えないけれど、人の笑顔を見るたびに、優しく抱擁されているような、そんな温かさを感じた―。