気付けば、君の腕の中。
あたしの前で腰を屈めた五十嵐くんは、ニヤリと効果音が聞こえそうなほど、口元を歪めた。
「で…、ガキの前で恥をかくか、おれに頭を下げんのとどっちがマシなんだよ?」
「ず、ずるいよ!! 五十嵐くん!!」
「できねーお前が悪いんだろ」
ごもっともですけど…!
うんうんと唸りながら頭を抱えて、少しだけ深呼吸を繰り返した。
「お、お願いします……」
うな垂れるように頭を下げれば「何を?」なんて意地悪なことを言い出す五十嵐くん。
「な、何を…って、その、踊りを、教えて欲しいです……!」
「ふは、仕方ねーな。ほら、来いよ」
そう言って手を差し伸べる五十嵐くんは、一瞬悪魔に見えたけど、気のせいではないはずだ。