気付けば、君の腕の中。
あわあわと慌てて弁解をしようとするあたしを見て、クツクツと笑う五十嵐くんはやっぱり悪魔だったと思い直した。
土日も幼稚園に通い、ようやく踊りのコツをつかんだあたしは、やっとの思いで踊れるようになった。
あっという間に日々は流れて―、ついにお遊戯会の前日を迎えた。
あたしは幼稚園に向かう前に、一枚のプリントと睨めっこをしていた。
「…はー、まだ入部届け出せてねーの? それ今日までじゃなかったっけ」
五十嵐くんがあたしの手に持っていた紙を奪うと、鼻で笑った。
むっとしながら「悩み中なんだ」と言えば、あたしの頭をくしゃりと撫でた。
「ま、先行ってる。お前、遅刻したらあのガキに怒られんぞ」