気付けば、君の腕の中。
不意に凜くんが唸った。
思わず鞄を落としてしまったが、凜くんは起きていないようだ。
「…ん、絢……華…」
「凜くん…」
何の夢を…見てるのかな。
せめて夢の中だけでも、あたしたちは向き合って話せているだろうか?
少しだけ肩が震えているように見えて、あたしはそっと凜くんの髪に触れた。
寝癖を梳かすように、優しく撫でる。
「……凜くん、あたしは怒ってないんだよ」
だから、話しかけて欲しいのに。
素直になれないあたしは、寝ている君の髪を撫でてあげることしか出来ない。
ゆっくりと手を離すと、鞄を拾って、そのまま教室を飛び出した。