気付けば、君の腕の中。


だけど…、お弁当なんて久しぶりに作るなあ。

お母さんにはいつも朝ご飯と夜ご飯だけ、作り置きするくらいだ。

昔、お父さんにお弁当を作ってあげたことを思い出して、ちくりと胸が痛んだ。


「じゃあ、とびきり美味しいお弁当を作ってくるね」

「まずかったらゆるさねーからな! よし、おどるぞー!!」


嬉しそうにみんなを集め出した白くん。

ついつい頬が緩んでしまうと、ペシッと軽く頭を叩かれた。


「…何で叩くの、五十嵐くん」

「締まりがない面だったからつい」

「ついじゃないよ!」


こうして五十嵐くんに怒ったり、許してあげたりするのは、幼稚園に来なかったら存在しない話だったのだろう。


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