気付けば、君の腕の中。
あたしの両手を握った後、白くんは迎えに来たお母さんと一緒に帰っていった。
「おい、バカ女」
「五十嵐くん、いい加減にあたしの名前覚えて欲しいよ…」
廊下に出たあたしを引き止めた五十嵐くんは、頭をがしがしと掻き毟った。
「…貸し、二つにしてやったから。感謝しろよ」
「え…?」
「おい、陽菜。帰んぞ」
「はあい。あやかおねえさん、またあしたね」
玄関で靴を履いた二人が出て行くのを、あたしは呆然と見つめたままだった。
「どういう…?」