気付けば、君の腕の中。
部屋の片づけを済ませると、清水さんにお辞儀をしてから幼稚園を後にした。
外に出ると、どこからか桜の花びらがあたしの前を通り過ぎる。
鞄を肩にかけると、欠伸をしながら門を出ようとした。
「えっ……」
そこにいた人物に目を見開かせた。
塀に背中を預けて、ぼんやりと夜空を見上げる彼は、いつか見た姿と重なる。
あたしたちの前に淡いピンク色の花びらが風とともに通り過ぎた後―、ゆっくりと彼は振り返った。
「……帰ろう、絢華」
久しぶりに凜くんの顔を見た瞬間、堪えていた涙がとめどなく溢れた。