気付けば、君の腕の中。
こちらに視線を向けた五十嵐は、ニヤリと口元を歪めて、俺を嘲笑った。
…違う。あれは愛しいなんて視線を向けていたのではない。
俺が絢華に執着していると、五十嵐は知っていたのだろう。
だから絢華を奪えば、俺の動揺する姿でも見れると考えたのかな…。
…正直あんな人と友達になりたいなんて、俺はどうかしていると思う。
ただ、昔の五十嵐は俺に知らない世界を教えてくれた。
世の中でそれは知っていて当然だと言われるものですら、俺は知らないことのほうが多かった。
例えば、お菓子という食べ物。
サッカーという遊び、音楽という心を癒すもの…それらを教えてくれたのが五十嵐だったのだ。