気付けば、君の腕の中。
結局一言も話さないまま駅を乗り換えて、あたしの家の前に着いてしまった。
手、ずっと握っていたなあ…。
凜くんの手のひらは冷たいけれど、物凄く安心感があった。
離すのが惜しくてそのままにしていると、くるりと凜くんが振り返った。
「……色々、俺なりに考えたんだ」
「!」
それって…、あたしとのキスが嫌だったとか、そういうのじゃない…よね?
自分でもネガティブな考えだと分かっているけど、不安で仕方がない。
ぎゅっと目を閉じると、凜くんの手のひらがあたしの頭に触れた。
ぎこちなく左右に動くそれに、凜くんらしくてまた泣きそうになった。