気付けば、君の腕の中。


…無自覚だから、余計辛いんだよ。

あたしだって言えるのならば、“友達”じゃなくて「恋人」として好きの意味に近いよって言いたいけれど…。


もし、間違いだったらとんでもない話だ。


だけど、あたしの頭の中ではあの日言った凜くんの言葉が消えなかった。


“絶対彼女になりたいなんて…言わない、よね?”

“俺と、ずっと友達で…いてくれる?”



あの時の凜くんは、何も知らない子供みたいで全てが上手くいっていた。

ここであたしがバカみたいに期待して、凜くんの不安定な感情に名前をつけてしまったら…。


桃が…、悲しむ結末を迎えてしまうから、だからあたしはいつものように不器用な笑みを浮かべた。


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