気付けば、君の腕の中。
「…そうだよ」
あたしの言葉は形にならないまま、ふわりと夜空に溶け込んだ。
「凜くんがあたしに向ける感情は“友達”だよ」
よかったね、やっと凜くんは“友達”を手に入れることが出来たんだよ。
「そ、っか……、これが“友達”に対する気持ちなんだね…」
嬉しそうに頬を緩めた凜くんに、ちくりと胸が痛んだ。
言いたいことが何一つ言えず、不意に浮かんだ五十嵐くんの声に泣きそうになった。
“精々、フラれてバカみてーに泣いとけば。それがアイツに惚れた女の行く末だから”
…振られることもなければ、あたしの感情すら言えない…そんな行く末があるなんて、知らなかったよ…。