気付けば、君の腕の中。


あたしの言葉に頷いてくれた清水さんを見て、さっさと荷物を置きに幼稚園の中へ入った。


休憩室に荷物を置くと、見知らぬ女性と出くわした。

わっ、と思わず声を上げると、黒縁眼鏡をかけた女性はさほど驚いていないようだ。


「……貴方が絢華さんね?」

「えっ、あ、そうです…けど」

「私はここの園長の娘、美湯(みゆ)と言うわ。…どういう事情で来ているのか知らないけど、こんな田舎町の幼稚園なんて、関わっても無駄よ」


それだけを言って、休憩室から出て行った彼女を見つめることしか出来なかった。


昔のお姉ちゃんのような、どこか冷め切った瞳をしていたなあ……。


外で清水さんが呼んでいる声を聞いて、慌ててそちらへ向かった。


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