気付けば、君の腕の中。
―ピピピ…と聞きなれた電子音が鳴り響いた。
寝起きだからか重たい腕を伸ばして、いつものように目覚まし時計を探す。
ぴたりと音が止むと、重い腕を瞼の上にのせて小さく息を吐いた。
「…目、腫れてるかなあ」
昨日、お父さんが出て行った後、お母さんの為にお湯を浴槽に溜めて夜ご飯を作って…。
その時、不意に思い出した。
指先に出来たささくれ。乾燥しているせいか少しカサついている。
ハンドクリーム、今日中には買わないと。
起き上がって携帯を手に取ると、メモ帳を開いて、そこに書き留めておく。
「…よし、今日はお母さんの大好きな白菜を使った料理にしようかな」
着替えを済ませてから一階に下りると、既にお母さんは仕事へ行ったようだ。
いつものようにあたしが作り置きした朝ご飯が、綺麗に平らげてある。