気付けば、君の腕の中。
結局、五十嵐くんが起きるまで左手は繋がれたままだった。
「…あ? あー、陽菜と間違えてたわ」
ひなちゃんと間違えて握っていたらしく、やっと手を離してくれた。
くぁ、と欠伸をする五十嵐くんに上着を返すとあたしは彼の寝癖に気づいた。
「あれ、五十嵐くん。ここ、寝癖ついてるよ」
そういって触れると、今度は五十嵐くんが固まった。
いつもの意地悪そうな表情ではなく、無表情に近い顔を見て、あたしは何かしてしまったのかと青ざめる。
「………おい、陽菜」
「んん…、あ、れ? おにいちゃん…かお…」
いきなりひなちゃんを抱っこした五十嵐くんは、さっさと荷物をまとめて立ち上がった。
「…バカ女、てめー覚えてろよ」
吐き捨てるように呟いた五十嵐くんの耳が赤くなっていることに、あたしは気づかなかった。