気付けば、君の腕の中。


ニヤリと効果音が聞こえそうなほど、先輩は口角をつり上げた。

思わず後ずさると、先輩に腕を引っ張られて、そのまま壁に押し付けられる。


「あの時よー、お前のおかげで好きだった女と付き合えたけど、アイツぜんっぜん駄目だったわー! 女と話すなだの自分以外の女と付き合うなだの…うるせーの」


ギリッと掴まれた腕が悲鳴を上げた。

あたしは先輩を怯えた目で見ることしか出来ず、何をされるのかと冷や汗をかいた。


「マジ、あんときお前と付き合ってれば、メンドーな女に付き纏われなくて済んだのによぉ。
つーことでもう1回付き合ってくんね? 周りの女たちも嫉妬してくれるしさ、一石二鳥なわけよ」


春樹先輩は二つ上の先輩で、演技とは思えない愛情をくれて、あたしが家族のことで悩んでいると助けてくれた人、だった。


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