気付けば、君の腕の中。
ばたばたと先輩たちが出て行くのを、呆然と見つめた。
「…あんなやつのどこがよかったわけ?」
「ど、どうして……」
「おれ、一応美術部なんだけど」
「え!?」
い、五十嵐くんが美術部だったなんて意外だ。
「ほら、座れば。言っとくけど、殆どのやつは幽霊部員だから来ないと思うけど」
「そ、そうなんだ…」
中学生のときも、みんな来なくて、いつも冬樹くんと二人きりだったことを思い出した。
五十嵐くんの指差す席に座ると、あたしの正面に座った五十嵐くんが「で」と言葉を続けた。
「…本当にあんな先輩のことが好きだったわけ?」