気付けば、君の腕の中。


ばたばたと先輩たちが出て行くのを、呆然と見つめた。


「…あんなやつのどこがよかったわけ?」

「ど、どうして……」

「おれ、一応美術部なんだけど」

「え!?」


い、五十嵐くんが美術部だったなんて意外だ。


「ほら、座れば。言っとくけど、殆どのやつは幽霊部員だから来ないと思うけど」

「そ、そうなんだ…」


中学生のときも、みんな来なくて、いつも冬樹くんと二人きりだったことを思い出した。


五十嵐くんの指差す席に座ると、あたしの正面に座った五十嵐くんが「で」と言葉を続けた。


「…本当にあんな先輩のことが好きだったわけ?」


< 267 / 445 >

この作品をシェア

pagetop