気付けば、君の腕の中。
あたしは首を横へ振った。
少し俯くと、机の傷跡が目に入る。
ふと、先輩があたしを迎えに来た日のことを思い出した。
―『おっ、また一人で絵描いてたのかよ! ふーん、普通に上手いんじゃね?』
―『今度俺を描いてみろよ! イケメンに描かねえと許さねえかんな!』
一人ぼっちだったあたしのところに駆け寄ってくれた先輩は、とても優しく見えた。
例え、影で「アイツ根暗じゃね?」とか「意外にも使えて便利だわー」なんて言われても、先輩の言葉で救われたことだってあったのだ。
―『はあ!? 家族が離婚寸前??!
あーそういうときは何とかなるって思っとけよ。そーしたら気が楽になんだろ。んな難しいことばっか考えてねーで、とっとと俺の絵描けよ!』