気付けば、君の腕の中。
五十嵐くんの言葉に驚いて、あたしは鉛筆を落としてしまった。
カランカランと鈴が転がるような音が、教室内に響く。
「…アイツ、おれと少し会わねー内に細くなりやがって、気づいたら女と付き合うようになってた。アイツが“友達”に執着するようになったのも、おれのせいだ」
「ど、ういう…」
「……おれは、小学校を卒業してから、親に頭のいい中学に通えって言われて、そのとおりに従った。あの時、アイツを見ていれば、あんな一人で抱え込まなくてよかったのに…」
「…五十嵐くん、もしかしてずっと後悔…してたの?」
びくりと大げさなほど肩が震え上がった五十嵐くんは、本当は―…。
「そうだよ…、アイツがおれのことを“幼馴染”だとか“友達”だと思っているのに気づいてたけど…何にも相談しねーで、バカみたいに一人で抱えるアイツを見てたらイラついたんだ」