気付けば、君の腕の中。
しみじみと言う奈々美に、あたしはまたパニックにさせてしまうかなと思いつつ、お姉ちゃんのことを話した。
「あの時白くんが幼稚園で踊りをやるから教えてくれって話をしたのは覚えてる?」
「あー、何となく?」
「実は…、白くんと会う前にお姉ちゃんに常坂駅に来てって言われて…」
あの日の記憶がフラッシュバックした。
未だにずきずきと痛む心を抑えると、奈々美をじっと見つめた。
「…お姉ちゃんは、月城と県外に引っ越したの」
「えっ…、それ本当?」
「……うん、あの時、意味が分からなくて、自分の感情がぐちゃぐちゃだったから、奈々美に話せなかったんだ」