気付けば、君の腕の中。
茂みの近くに生えていた猫じゃらしを手に持って、猫の前で左右に動かしてみる。
猫は獲物を狙うかのようにじっと見つめて、バッ!と猫ぱんちをして見せた。
あまりにも可愛らしい姿にあたしが頬を緩ませると、後ろから砂利を踏む音が聞こえた。
「…何してるの?」
焦って振り返ると、そこにいたのは大人しそうなあたしと同い年くらいの男の子。
人の家の庭だったことを思い出し、猫じゃらしを地面に置くと、慌てて菓子折りを差し出した。
「引っ越してきたみたいだから、その、菓子折りをって…。
ご、ごめん。誰もいなかったみたいだから後でにしようと思ったんだけど…。猫が凄く可愛かったから……」
「別にいいけど…、菓子折りなんていいよ」