気付けば、君の腕の中。
…その、凜くんのお母さんにあたしの名前を知られたってことは、絶対彼女だと誤解してるよね…!!
真っ赤な顔を両手で隠すと、凜くんがあたしの頭をゆるりと撫でた。
「大丈夫だよ、絢華は彼女じゃないって言ったから」
「…!」
「? 顔、赤いけど大丈夫?」
「だ、だだ大丈夫!!」
突然の名前呼びにどきりとしてしまった。
凜くんは女の子の扱いが物凄く上手だ。
簡単に喜ばせたり、触れたり。
…ちくりと胸が痛んだけれど、きっと気のせいだろう。
「あ、り、凜くん。電車来たよ」
誤魔化すように言えば、凜くんはとても優しげな瞳であたしを見つめていた。
それは凜くんの彼女に向けるような視線と同じ様に見えて、パッと視線を逸らす。
どうして、こんなにもドキドキして息苦しいのか…あたしは知らない振りをした―。