気付けば、君の腕の中。
あのバカ女の食ったケーキを、普通におれが食べていた。
貸しを二つ作れたことに、喜ぶ自分がいた。
まだ、アイツと関われるのだと思ったら、何故だか嬉しいと思ってしまった。
何で、あのバカ女と嫌いだった坂木なんかの背中を押したのだろう。
ほっとけばよかったのに。
何気なく妹に「人の背中を押すときってどんな感情だ」と訊ねた。
妹相手に何言ってんだと思っていると、陽菜はにこりと笑っていた。
「おにいちゃん、あやかおねえさんのこと、ようやく好きって分かったんだね」
…は?
そんなわけねーだろ、ふざけんな。誰があんなバカでお人よしで、全然可愛くねー女を好きになるんだよ。