気付けば、君の腕の中。
バカ女がまた幼稚園の園長と、その娘の背中を押そうと考えているようだ。
おれが陽菜を連れて帰ろうとしたとき、教えてもらった。
トイレに行っていたと思ったので、何となく聞いただけだ。それで別に腹を壊してたわけではなかったのかと、安堵のため息を零したのは気のせい。
オムライスの作り方を聞いていたのも、陽菜に「なかよし」だと言われて、内心で動揺したことも、全部何かの発作が起きただけ。
寝たふりをして、ようやく眠ったあいつの手を握ってしまったのは、寒そうだと思ったから。
春だけど、別に関係ない。寒そうだと思っただけ。ただ、それだけだ。
寝癖がついているからと、頭に触れられたときは心臓が一瞬止まったかと思った。
じわりじわりとおれの心が何かに蝕まれる。