気付けば、君の腕の中。
+ 昨日の涙は愛に変わった
(Side:絢華)
夏休みまで残り一週間を切ったある日のことだった。
既に放課後を迎えたにも関わらず、誰も帰ろうとしない。
突然注目を集めたその話題に、あたしは胸が引き裂かれるような痛みを感じてしまった。
好きな人同士が付き合っているならば、必ずいつかはするはずの―「キス」。
あたしは凜くんにキスをされたとき、ただただ困惑と期待してしまう気持ちになった。
教室内で盛り上がる声が、あたしの心をぼろぼろにさせる。
あたしが傷つく資格なんてないのに…。
クラスメイトの女の子がニヤニヤしながら、あたしの前に座る凜くんに近寄った。
「坂木、だっけ? 違うクラスの一ノ瀬って女と、今日の昼間にキスしてたの本当~?」