気付けば、君の腕の中。


…凜くん、何て返事をするのかな。

桃と付き合ってるんだから、キスをするのはおかしな話ではない。

だけど、…それなら何であの日あたしにキスをしたの?


期待…しても無駄だと分かっていながら、あたしは“友達”だと言って、凜くんを突き放したはずなのに……。


心拍数が高まる。

頭の中で「聞いてはいけない」と分かっていても、耳を塞げない自分がいた。


「…絢華」


不意に名前を呼ばれて、びくりと肩が震え上がった。

そちらへ視線を向けると、あんなにもざわついていた教室が静まり返る。


「…部活行くぞ」


< 307 / 445 >

この作品をシェア

pagetop