気付けば、君の腕の中。
五十嵐くんの言うとおりだ。
二人を応援するというのは、自分の恋を諦めたと言っても間違いではない。
あたしは―…、それを覚悟した上で背中を押したはずなのにね…。
「…まだ、自分の気持ち否定すんのかよ」
窓のところへ近づくと、五十嵐くんが振り返った。
彼の綺麗な黒髪が風で揺れる。
あたしが俯くと、目の縁に溜まった涙がぽろりと零れ落ちた。
ゆっくりとそれが地面に落ちていくのを眺めて、きゅっと下唇を噛み締めた。
「もう…、無理なんだろ」
自分の気持ちを押し殺すことは、失恋することよりも辛いと分かってしまった。