気付けば、君の腕の中。


覚えていないわけではなかったけど、素直に言うのが恥ずかしくて誤魔化そうと思った。

すると、突然頭を鷲掴まれたので、慌てて頷くと五十嵐くんの手のひらは離れた。


「…あれ、今週の日曜日に決行するから」

「え、今週? 唐突だね」

「……陽菜が、あのガキに作りてーから教えてほしいんだと」

「? 五十嵐くんが作りたいから教えてほしいんじゃなかったの?」

「違えーよ」


そ、そうだったんだ…。

やっぱり五十嵐くんは妹思いだなあ…。


「何その微笑ましいと言いたげな顔」

「え、嘘、顔に出てた!??」


驚いて両手で顔を隠すと、五十嵐くんが力の抜けたような声で笑った。


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