気付けば、君の腕の中。


彼の笑顔を見て、あたしまでつられて笑うと、ひゅっと息を呑む五十嵐くん。


「? 五十嵐くん、顔赤いよ?」

「は、はあ? そんなことより今日は何の絵描くんだよ」

「ああ、今日はね、風景を描いてみようかなーって思って」


鞄からスケッチブックを取り出すと、もう半分ほど描き込んでいることに気づいた。

初めて五十嵐くんと絵を描いたときは、空き缶を描いたっけ。

その次は黒板を描いてみたり、後は時計とか…色んなものを描いてるなあ。


ちらりと五十嵐くんへ視線を向けると、がしがしと頭を掻いて、ため息を零していた。


もしかして“男友達”ってこんな感じなのかな?

凜くんには言えない本音も、五十嵐くんだったら言えるし、何だかんだ言って助けてくれるから、五十嵐くんには頭が上がらないよ。


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