気付けば、君の腕の中。
あたしの目の前に見えるのは、かなり古びたアパートだ。
人が住んでいるかも怪しいアパートに驚いていると、五十嵐くんが階段を上がり始めたので、慌てて追いかけた。
「あ、手すりには掴まるなよ。壊れるから」
「っへ!??」
「それから床が抜けるかも知れない。雨の日とか普通に雨漏りしてるし」
「えええ!?」
もっと豪邸に住んでるかと思ったけど…、デンジャラスな生活を送ってたんだね…。
102号室と書かれたプレートには、確かに「五十嵐」と書かれている。
あたしは手に持っていた菓子折りを握り締めると、ガチャリと扉が開いた。