気付けば、君の腕の中。
恐る恐る振り返ると、そこにいたのはクラスでヤンチャな男の子、月城 来也(つきしろ らいや)。
彼とは中学一年生のときからずっと同じクラスだ。
素直に謝ると、それ程気にしていないらしくあたしの横を通り過ぎる。
「…ったく、それより転校生がどうだか知らねーけど、浮かれてると来月のテスト赤点になって、卒業出来ねーぞ」
「そうだった…!! 月城、また数学教えてくれる??」
「はー…気が向いたらな」
何だかんだ言って優しい月城に感謝しながら席に着くと、奈々美がにんまりと笑みを浮かべていた。
「二人の男を手玉に取るなんて…、絢華ったら悪い子!」
「えっ? なあに、手玉…?って」
首を傾げて訊ねたあたしに奈々美は呆れ顔になった。
「…まあ、絢華は恋愛より…家族だものね」
寂しげに微笑む奈々美を見て、あたしは苦笑するしかなかった。