気付けば、君の腕の中。


手渡された人形は服がぼろぼろで何とも言えない見た目だ。


「あ、あたしお裁縫セット持ってるよ。ひなちゃん、この服直してもいい?」

「おねえさん、おさいほうできるの?」

「うん。家事全般は一応出来るんだ」


鞄からお裁縫セットを取り出して、ほつれたところを縫い合わせていく。

ひなちゃんが「すごいすごい!」と言ってくれるので、あっという間に服は直った。


「おねえさん、ありがとう!」

「どういたしまして。これで五十嵐くんと沢山遊べるね」

「えへへ、よかったあ。おにいちゃん、けっぺきしょうだから、いままであそんでくれなかったんだね!」

「…違うんだけど。なー、お前のせいで勘違いされてるの、どうすればいいわけ?」


顔を歪めた五十嵐くんは、手渡された人形を嫌そうに見つめていた。


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