気付けば、君の腕の中。
歩き出そうとしたお姉ちゃんの腕を掴んで、あたしは首を横へ振った。
「…なるべく、個室が用意できるところってあるかな?」
「それなら…カラオケにする? 絢華、まだ学生だから高級な料理屋に行っても、緊張するでしょ?」
「…うん、そうしよう」
お姉ちゃんが歩くたびに、ヒールの音がカツンと響いた。
ゆっくりと掴んでいた腕を離すと、眩しい太陽の光に目を細めた。
「絢華、今日は一人で来たの?」
「えっ? あ、友達と来たよ?」
「そうなんだ…、よかった。絢華、方向音痴だから迷ったらどうしようと思ってたの」
あたしの歩幅に合わせて歩くお姉ちゃんは、当たり前だけどあたしのお姉ちゃんだ。
今はそれが辛くて、どうしようもなく心配されたことが嬉しかった。