気付けば、君の腕の中。
帰りに渡そうと思ったけど、陰輔くんは今受け取った。
邪魔にならないか不安に思ったあたしを見て、何故か頬を摘んだ。
「い、いひゃ、いひゃい…」
「バーカ、こんくらい持てるっての」
奈々美が結ってくれた髪に、優しく手を乗せた陰輔くんは、すぐに視線を逸らした。
「…足元、気をつけろよ」
「う、うん…。ありがとう」
まさか下駄まで用意してくれるとは思わなかったから、今転ばないか不安な気持ちでいっぱいだ。
いつの間にか手を離していた陰輔くんは、ちらりと振り返っては、また歩き出した。
途中で石につまずくあたしを見て、はあ、と何故かため息を零した後、あたしの前に手を差し出した。