気付けば、君の腕の中。


こ、これって…手を、繋いで、って意味…だよね!?

断ったら、傷つくかな…。


ゆっくりと手を重ねると、優しく握り締められて、歩くスピードを落としてくれた。

……去年のあたしだったら、まさか男の子と花火大会に行けるなんて、思いもしなかっただろうなあ。


陰輔くん…、本当に、あたしのこと…好きじゃない、よね?


だって、あたしはずっと凜くんのことが好きでそれを知っていながら、傍にいてくれたのだから。


…もし、本当にそうだったら、沢山傷つけてしまったのだろうか。


桃は…、凜くんに対して、陰輔くんと同じような感情を抱えていたの、かな。


「……絢華、屋台見えてきたけど、何食いたいわけ」


その声にあたしは我に返ると、今は考えないことにした。


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