気付けば、君の腕の中。


花火が打ちあがるまで、残り数分を切ったようでみんな見やすい位置に移動した。


人に流されないようにあたしの手を引っ張る陰輔くん。

すると、人の流れとは反対方面に向かって歩き出した陰輔くんは、どこかを目指して歩いているようだ。


「い、陰輔くん、どこに行くの?」

「見やすいとこ」

「わわっ、ま、待って……!」


石につまずきそうになると、陰輔くんは手を強く握り締めた。

じんわりと汗ばんだ手のひらは、少しだけ緊張しているようだ。


ようやく歩くスピードを落とした陰輔くんは、空を指差した。


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