気付けば、君の腕の中。
いつの間にか花火は終わっていた。
暫く抱きしめ合ったあたしたちは、恋の儚さを知った。
駅まで送ってくれた陰輔くんに感謝しながら、家までの道を歩く。
見慣れた風景なのに、どうしてか歩くたびに涙が止まらない。
不意に陰輔くんの声が脳内に響いた。
―「はっきり言って、おれお前のこと嫌いだったわけ。今日一日、彼女でもねーくせに、自分の友達ほっといて、アイツとイチャつくもんだからな」
初めて出会ったときは無表情で、冷たい視線を向けてくる人だったから、怖い人だと勘違いしていた。
―「…何、そんな見つめるなんて、襲われてーの?」
優しく頭を撫でてくるときだけは、全然怖くなかった。
むしろ、その手のひらの温かさに安心していたのは嘘じゃない。