気付けば、君の腕の中。
ようやく家に着くと、あたしは涙を袖で拭って深呼吸を繰り返した。
陰輔くんの気持ちは一生忘れない。
彼の温かい手のひらも、不器用な言葉も、笑顔も、全部全部―…忘れないよ。
玄関の扉を開くと、お母さんはもう帰っていたようだ。
下駄と一緒に泣き虫なあたしを脱ぎ去って、リビングの扉を開いた。
ぼんやりとテレビを眺めるお母さんを呼ぶ。
あたしの声に気づいて振り返ってくれたお母さんに―、あたしは運動会のことを話した。
日にちはもう決まっている。
お父さんには会えないだろうから、メールをしてみよう。
ここからが―、あたしの再スタートだ。